変わりたいと思う。

それでも、まだ、今日会ったばかりの人たちの前で、ひとりで弾くほどの勇気はなかった。わたしは弱いから。

だけど、彼と一緒なら、彼が隣にいてくれるのなら、少しは変われるかもしれない。

そしてきっと天音は、優しく微笑んで、受け入れてくれるだろうと思った――のに、次の瞬間、彼は小さく首を横に振った。

その顔はひどく強張っていた。薄い唇が震えるように動いている。それから彼は目を落として、ゆっくりとノートに書きつけた。

『僕はピアノは好きじゃないから、もう弾かない』

どくっと心臓が脈うった。

考えなしに口走ってしまった言葉を、今すぐに取り消したい。

なんて無神経なことを言ってしまったんだろう。ついさっき、ピアノは『好きじゃない』と書いた彼の顔を見て、きっとそこには複雑で苦しい事情があるのだろうと分かっていたのに。

激しい後悔が押し寄せてきた。

どうしてわたしは、こうなんだろう。本当にだめすぎて、自分が大嫌いだ。

自分を変えたいと思っていたのに、天音の力を借りて変わろうとするなんて間違っている。しかも、そのせいで彼に嫌な思いをさせてしまった。

目頭が熱くなってきて、わたしはうつむいね両手で顔を覆った。

すぐに、こつんと音がする。天音が指で立てた音だと分かったけれど、顔を上げられない。

すると次に、紙に文字を書きつける音が聞こえてきた。何を書いているんだろう、と思っていると、うつむいた視界にノートのページが差し出されてきた。