『僕のは君のせいだから』

「えっ、どういうこと?」

わたしのせいで泣いた、ということだろうか。でも彼はあのとき、出会ったときにはすでに泣いていた。どういうことだろう。

わたしの疑問が伝わったのか、天音はノートに文字を書きつける。

『嬉しくて、でも悲しくて、泣いちゃった』

そこに書かれた言葉を見るけれど、彼が言いたいことをうまく理解できない。

わたしはゆっくりと瞬きをして彼を見つめた。

照明の下で見ると、少し緑がかった薄茶色の瞳は、光に透けて美しくきらめいている。

なんて綺麗な目をしているんだろう。まるで宝石みたいだ。

思わず目を奪われていると、背後から足音が聞こえてきた。

そちらへ目を向けると、あかりさんがクリームソーダを運んできてくれた。

「お待たせしました。どうぞ、召し上がれ」

天音がぺこりと頭を下げる。

それから顔を上げた彼の目が、何かに吸い寄せられるように動きを止めた。

目を見開いて釘付けになっている。

わたしとあかりさんも彼の視線を追ってそちらを見た。

そこにあったのは、壁際のピアノだ。