何度目かも分からないため息をつきながら、アイスを口に運ぶ。

甘くて冷たくて、おいしい。

ストローでメロンソーダを吸うと、甘くていいにおいがして、しゅわしゅわと優しく舌を刺激する。

あのころと変わらない味。

わたしはすっかり変わってしまったけれど、この店もこの味も、ちっとも変わっていない。

ふいに、戻りたいな、と思った。

好きな人のことも友達のことも家族のことも将来のことも、何もかも忘れて、子どものころみたいにただ無邪気に笑っていたい。無理だけど。

またため息をついて、何気なく外を見た。

誰もいない真っ暗な路地を、切れかけた蛍光灯の頼りない明かりが照らし出している。

ぼんやりとそれを眺めていたとき、目の前を紺色のブレザーの男の子が歩いていった。

青白い光の中に浮かび上がる、色素の薄い髪の毛と端整な横顔。

――あの子だ。

その姿を見た瞬間、わたしは思わず音を立てて立ち上がった。

驚いたようにこちらを見るあかりさんとおじいさんに「すみません」と告げて、わたしは慌てて店の扉から飛び出した。