「どうぞ、召し上がれ。こんな店でよければ、ゆっくりしていってね」

「ありがとうございます」

そう言って頭を下げつつ、勇気を振り絞って、気になっていたことを訊ねる。

「あの、すみません……お代金って、いくらですか……」

この前、香奈たちと遊びに行って、話題の映画を観たり人気のスイーツを食べたり流行の服を買ったりしてだいぶ散財したので、お財布の中身が心もとなかった。

まさかジュース一杯で千円もすることはないとは思うけれど、確かめようにもメニューが手もとになかったので、いちおう訊いてから口をつけようと思ったのだ。

するとあかりさんは一瞬目を丸くして動きを止めてから、おかしそうに声をあげて笑った。

「なに言ってるの、お金なんかもらうわけないじゃない。私が連れ込んだんだし、勝手に飲み物出しただけなんだから」

「え……そうなんですか。でも、悪いです。もうあの頃みたいな子どもじゃないですし、ちゃんと払えますよ。……あの、千円超えちゃうとあれなんですけど……」

私の言葉に小さく笑って、彼女は「遠慮しないで」と首を横に振った。