『ごめん、追試で遅くなった。カラオケは行ってないです。今学校帰り』

そう返事をすると、すぐに返信がきた。

『また追試? 抜き打ちじゃないんでしょ、なんでちゃんと勉強しないの? 少しはお兄ちゃんを見習いなさいよ』

ふうっと大きなため息が洩れた。

勉強しなかったわけじゃない。勉強したけれど、だめだったのだ。

数学は本当に苦手で、教科書を読んでもなかなか頭に入ってこない。

しかも最近は考え事ばかりで、授業にも確認テストにも集中できていなかった。

お兄ちゃんと比べられても困る。

お兄ちゃんは、小さい頃から医者になりたいと言っていて、その夢に向かってずっと猛烈に勉強して、今は国立大学の医学部に通っている。

近所でも有名な秀才だ。

それに引き換えわたしは、せっかく入れた進学校でも周りについていけず、落ちこぼれ寸前。

お母さんがわたしの成績表を見るたびに大きなため息をつくのは当然かもしれない。

でも、これがわたしなんだからしょうがないじゃない、と思わずにはいられなかった。