分かっているけれど、それでも、思わずにはいられなかったのだ。

こんなに、こんなに好きなのに、どうしてわたしは好きになってもらえなかったんだろう。

どうして選んでもらえなかったんだろう。

本当に、本当に好きなのに、どうして彼の隣にいるのはわたしじゃないんだろう。

どうして彼の笑顔をひとりじめにできるのはわたしじゃないんだろう。

そんな思っても仕方のないことばかり考えて落ち込む毎日。

振られたんだからいつまでも彼に執着していたって仕方がないと分かってはいるけれど、自分ではどうしようもなかった。

「嫌だな……なんかもう、嫌だ……」

なにが嫌なのかも分からないまま、わたしはそう繰り返した。

泥の中を進んでいるように足が重くて、歩いても歩いてもなかなか進まないような気がする。

地下鉄に乗っている間も、泥の底に沈んでいるみたいに重苦しい気分で、時間の進みがいつもの何倍も遅いように思えた。