放課後は、結局カラオケには行かなかった。

苦手な数学の確認テストで合格点がとれず、追試を受けることになってしまったのだ。

しかも追試は満点をとれるまで同じテストを繰り返して受ける決まりで、集中できなかったわたしは何度もケアレスミスをしてしまい、帰れたのはすっかりあたりが暗くなったころだった。

「はあ……疲れた……」

靴箱に向かいながら、思わず小さなつぶやきが洩れてしまった。

こんなことは言っても仕方がないから、口に出さないようにしているのに。

ため息をつきながらぼんやりと窓の外を見下ろしていたとき、並んで校門へと歩いていく男女の姿を見つけて、ずきりと胸が痛んだ。

遠子と彼方くんだ。

もう暗いからはっきりとは見えないけれど、外灯の光に浮かび上がる小柄な身体とほっそりとした長身は、シルエットだけで分かってしまう。

部活の帰りに待ち合わせていたのだろう。

帰宅部のわたしがこんな遅くまで学校に残っているはずはないと思っているだろう二人は、いつもよりずっと近く肩を寄せ合って歩いていた。