「ねえねえ、このインスタ見てー、モデルさんなんだけどさ、めっちゃ可愛くない？」

「あのドラマ見てる？ すごい面白いから絶対見て！」

「駅前に新しいクレープ屋さんできたんだってー、今度行ってみようよー」

「ツイッターで回ってきたんだけどさ、このパンケーキ屋とアイスクリーム屋も行ってみたいんだよね。ほら、すごいインスタ映えって感じじゃない？」

「わーほんとだ、行きたい行きたい。じゃあ土日にみんなで行こうよ。決まりね！」

二人の話に相槌を打ちながらも、その内容は少しも頭に入って来ない。

彼女たちの声がわたしの周りでぐるぐる回って、いつまでもまとわりついてくるような気がした。

二人には申し訳ないけれど、ただの雑音のように感じてしまい、騒がしくて耳が痛くなりそうだった。

うまく笑顔が作れない。うまく答えが返せない。

だめだ。こんなんじゃ、二人に嫌な思いをさせてしまう。なんとか立て直さなくちゃ。

そうは思っていても、頭では、この前出会った不思議な男の子のことを思い出していた。

あの優しい歌声と笑顔、そして柔らかな静けさ。

学校でも家でも、誰かと一緒にいてあんなに静かで穏やかな時間を過ごせたことはない。

あの静寂が恋しかった。