瞼の裏に、さまざまな光景が浮かんでくる。

彼方くんの明るい声と、優しい笑顔。私の告白を断ったときの申し訳なさそうな顔。

遠子の苦しげな横顔。並んで歩く二人の背中。

ふ、と唇から吐息が漏れた。

苦しい。

なにが自分をこんなにも苦しめているのか分からない。

でも、苦しい。

彼方くんに振られたことが悲しいのか、遠子が彼方くんの彼女になったのが羨ましいのか、二人がとても仲良くしているのが妬ましいのか、分からない。

その全部かもしれないし、どれも違うような気もする。

自分の気持ちなのに、分からない。

自分がどうしたいのか、どうすれば救われるのかも、分からない。

ただ、とにかく苦しくてつらくて、堪えきれない嗚咽と、止めどない涙が、次々にこみあげてくるのだ。

わああ、と声をあげて泣いた。

どんなにつらいときも、声をあげて泣くことができれば、涙が枯れたころには少しはすっきりしている。

そうすれば、明日からもがんばって学校に行くことができる。

だからわたしは、この秘密の場所でだけは、少しも我慢せずに泣くことを自分に許しているのだ。

空を仰いで、空に声を投げつけるように、ただひたすらに泣く。