『僕は遥のおかげで少しずつ前を向けるようになってる気がする。遥は僕にとってすごく特別だよ』

そこまで書くと、天音はペンを置いた。

そしてこちらを向き、雪解け水のような透明な笑みを浮かべた。

「ありがとう」

初めて会ったとき、わたしの涙を乾かしてくれた、優しい声。

わたしは両手で顔を覆って、溢れる涙を拭う。

「わたしこそありがとう。わたしにとっても天音は特別だよ」

そう伝えようとしたけれど、涙に滲んだ声ではひとつも言葉を紡げなくて、

「やっぱり、なきむし」

と天音に笑われてしまった。おかしくなって、わたしも涙を流しながら笑う。

わたしにとって、天音は特別だ。

今まででいちばん悲しくて苦しくて、もうどうしようもなくなっていたときに、わたしを救って癒してくれた。

そしてわたしは天音に出会って初めて、誰かのことを救いたい、少しでも力になりたい、そのためなら自分にできることはなんでもする、と心から思えた。

生きていたら、わたしたちはこれからも何度も苦しい思いをしたり悲しいことを経験したりするだろう。自分の力ではどうにもからないことにも出会うだろう。

進路のことだってまだあいまいで、これからたくさんたくさん悩むことになるだろうと思う。

でも、そのときには、わたしの隣にもしも天音がいてくれたら、きっと乗り越えられるような気がした。

そして、天音が苦しんでいるときには、わたしが隣にいてあげたい。できる限りのことをしてあげたい。

ふたり肩を寄せ合って、もしもどちらかがよろけてしまっても、すぐに支えてあげられるように、いつも隣を歩いていたい。

わたしは生まれて初めて、そういうふうに思える人と出会えたのだ。

わたしたちはそうやって、少しずつゆっくりと、まばゆい希望の光が射すほうへと歩んでいくだろう。