冬枯れの桜の木の上から、枝の隙間を縫うように降り注ぐ光が、わたしと天音の全身を包み込むように照らしている。

冬の陽射しは透明で静かで優しい。

演奏を終えたわたしたちは、あかりさんに断って店を抜け出し、出会った公園に来ていた。

「なつかしい」

天音が今にも消えそうなかすれて声で言った。急に声を取り戻して、いきなり歌ったせいで、喉に負担がかかっているんだろうと思う。

「いきなりたくさんしゃべったら、喉痛めちゃうよ。筆談にしよう」

天音がにこりと笑ってノートとペンを取り出した。

『声が出るようになったら、筆談よりたくさん話せるから、遥とたくさんしゃべれるようになると思ったけど、今はまだ書いたほうが早い』

「そりゃあね、何年もだんまり決め込んでたんだから、急にぺらぺらはしゃべれないでしょ」

わたしの言葉に、ははっと天音が笑う。

『最近遥が毒舌だ』

「本当はわたし、心の中では毒ばっかり吐いてたから」

口には出さないだけで、家族に対しても友達に対しても、嫌なことをたくさん思っていた。

「でも、毒って溜め込むとよくないらしいし、適度に吐き出していこうかなと。まあ、そう言いつつも家族の前でも友達の前でもやっぱりいい顔しちゃうんだけどね」

『じゃあ、僕の前でだけ?』

「まあ、今のところは」

わたしが苦笑しながら頷くと、天音はふふっと笑みを洩らして、『嬉しい』と書いた。