最初は他の子は心配してくれていたけど、だんだんいじめに加わるようになって、最後には誰も声をかけてくれなくなった。でもそれは仕方がないと思う。下手なことをして自分が代わりに標的になったら困るから。僕だって逆の立場だったらそう思う。

僕の存在自体がムカつくと言われたから、学校ではあまり声も出さないようにして、目立たないようにいつもうつむいて顔を隠して、息を殺すようにしていた。

おかげで少しずつ嫌がらせが減っていたのに、もし翔希といるところを見られたら、またぶり返すんじゃないかと思って、不安で仕方がなかった。

でも、しばらく遊んでいたら、クラスの人たちが何人かでこっちに向かってくるのが見えた。

その瞬間、僕は全速力で逃げ出した。

翔希を置いて。

翔希はまだ小さいから絶対に目を離しちゃだめ、一人にしちゃだめって、母さんからきつく言われてたのに。

でも、僕はその時、自分のことしか考えられなかった。自分の身の安全のことしか頭になかった。

家に走って向かっている途中に、翔希を置き去りにしてしまったことの重大さに気づいて、慌てて公園に戻った。

そして、ブランコの下でうつ伏せに倒れ込んでいる翔希を見つけたときは、心臓が凍るかと思った。

大声で名前を呼びながら駆け寄って見ると、頭から血が出ていて、足が変な方向に曲がっていた。

泣きながら家まで戻って父さんと母さんを呼んできて、翔希は救急車で運ばれた。ブランコから落ちたときに頭をブランコ板で打って皮膚が切れていて、足は骨折していた。

骨折が治っても、翔希の足は元通りには動かなくなっていた。しばらくリハビリして、日常生活には支障がないくらいには動けるようになったけど、サッカーはもうできなかった。