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彼が静かに書き続ける言葉を、わたしはじっと目で追う。

読みながら、ひどく胸が痛んだ。天音がそんなつらい思いをしていたなんて。

都会に行けば、外国人なんて珍しくもなんともないんだろう。実際、家族で東京や大阪に旅行に行ったときは、金髪の人や青い瞳の人や黒い肌の人を数えきれないほどに見かけた。

でも、観光地でもなんでもないこのあたりでは、外国人は本当に珍しい。工場などで働くアジア系の外国人はたまにいるけれど、ヨーロッパ系の外国人は全くといっていいほど見ない。たまに白人の人が歩いていると、「外国人がいる」と指を差してしまうくらいに珍しいのだ。

そんな中で、明らかに外国の血が入っていると分かる容姿をしている天音は、きっとわたしには想像もできないような思いをたくさんしてきたのだろう。

うつむいてペンを動かし続ける天音の顔を見つめる。伏せた目を縁どる睫毛は、濃くて長くて、髪と一緒でとても色が薄い。スタンドライトの光を受けて金色に輝いている。

すごく綺麗だ。でも、この色が、天音を苦しめてきたんだろう。

わたしはやるせない思いを噛みしめながら、また彼の言葉を追った。