「え……っ、これ、翔希くんが描いたの!?」

驚いて顔を上げると、ちょうど天音と目が合って、彼がこくりと頷いた。相変わらずつらそうな表情で。

「えーっ、すごいね。すごいよ、これ。ねえ翔希くん、絵が好きなの?」

翔希くんがちらりと振り向いて、

「まあ……」

と無表情に答えた。

「あ、ごめんね、集中してるのに邪魔しちゃって」

「まあ……別にいいけど」

彼はそう言うとまた前に向き直り、作業に戻った。

天音がわたしの肩をとんと叩き、部屋の外を指差した。出よう、と言っているのだと分かって、わたしは頷いて廊下に出る。

天音はゆっくりと歩いて、奥のドアを開けた。置いてあるものの雰囲気で、彼の部屋なんだろうなと思う。

シンプルな机とベッド、そして真ん中に小さなテーブル。その前にクッションを置いて、天音が『どうぞ』というように手のひらを向けた。わたしは頷いて腰を下ろす。

彼は机からボールペンと大判のノートを持ってきてわたしの向かいに座った。

『長くなると思うけど、聞いてくれる?』

まっさらなノートに書かれた文字を見て、わたしは「うん」と頷いた。

「聞きたい。聞かせて」

天音が目を細めて微笑む。

それから彼は、長い長い苦しみの過去を話し始めた。