彼はあまり感情の見えない顔でじっと天音とわたしを交互に見て、それからわたしに小さく会釈して口を開く。
「どうも……弟の翔希です」
「あっ! どうも、天音の友達の広瀬遥です」
「ああ、そう……」
翔希くんはあまり興味のなさそうな様子で、そっけなく答えてまた下を向いた。再び、かりかりかりと響くペンの音。
その後ろ姿を見ていて、あることに気がついた。遠子が絵を描いているときと、手の動きが似ている。
「絵……描いてるの?」
思わず訊ねてしまった。
天音がぴくりと反応したので、見上げると彼はつらそうな顔で唇を噛んでいる。
なぜだろう、と思っている間に、翔希くんがこちらを振り向いて「まあ」と答えた。
次に彼は天音のほうを見て、ふうっとため息をつき、また前に向き直って絵を描き始める。
わたしは視線を巡らせて、床に何枚かの紙が落ちているのを見つけた。
しゃがみこんで見てみると、そこには、黒のボールペン一色で紙面いっぱいに描かれた街があった。
余白がないくらいに描きこまれた黒い線、目を見張るほど細かくて丁寧で精密な絵。見たこともないような迫力のある絵だ。
「どうも……弟の翔希です」
「あっ! どうも、天音の友達の広瀬遥です」
「ああ、そう……」
翔希くんはあまり興味のなさそうな様子で、そっけなく答えてまた下を向いた。再び、かりかりかりと響くペンの音。
その後ろ姿を見ていて、あることに気がついた。遠子が絵を描いているときと、手の動きが似ている。
「絵……描いてるの?」
思わず訊ねてしまった。
天音がぴくりと反応したので、見上げると彼はつらそうな顔で唇を噛んでいる。
なぜだろう、と思っている間に、翔希くんがこちらを振り向いて「まあ」と答えた。
次に彼は天音のほうを見て、ふうっとため息をつき、また前に向き直って絵を描き始める。
わたしは視線を巡らせて、床に何枚かの紙が落ちているのを見つけた。
しゃがみこんで見てみると、そこには、黒のボールペン一色で紙面いっぱいに描かれた街があった。
余白がないくらいに描きこまれた黒い線、目を見張るほど細かくて丁寧で精密な絵。見たこともないような迫力のある絵だ。