埃ひとつない綺麗な廊下を歩く。リビングが見えたけれど、誰もいなかった。

いくつかの誰もいない部屋を越えて、階段を登る。二階には部屋が二つあって、手前のほうのドアは半開きになっていた。でも、中は暗いので、誰もいないのだろう。

そう思って通りすぎようとしたとき、天音がそのドアの前で止まった。わたしもつられて足を止める。

天音はドアをこんこんとノックして、中を覗きこんだ。

他人のわたしが同じようにしてもいいのか分からなくて、とりあえず後ろで待とうと少し足を引くと、天音が身体をずらして私から中が見えるようにした。

わたしも一緒に見るように言っているのだと理解して、彼にならって覗きこむ。

部屋には机とベッド、大きな本棚があった。本棚には、図鑑のような分厚い大型本がずらりと並んでいる。

そして、机の前には学ランの男の子が座っていた。うつむいて黙々とペンを動かしている。

天音がもう一度ノックをすると、彼がゆっくりと顔を上げた。

天音のお兄さんか弟だろうと思っていたのだけれど、振り向いた顔は、全く天音に似ていなかった。