天音がゆっくりと校門をくぐろうとしたとき、わたしはふうっと息を吐いて、彼の前に姿を現した。

「こんにちは。久しぶり」

声をかけると、天音が勢いよく顔を上げた。

柔らかく波うった金色の髪が、動きに合わせてさらりと揺れる。これ以上ないくらいに大きく見開かれた薄茶色に透ける瞳が、驚きを隠せないようにわたしを凝視していた。

「ごめんね、急に……。どうしてももう一回会って話したかったから」

わたしの言葉に天音はうつむいた。しばらく何かを考えるようなそぶりを見せてから、ゆるゆるとノートを取り出す。

『僕のほうこそ、ごめん』

何を謝っているのだろう、とわたしは顔を上げて彼の顔をじっと見つめる。長い睫毛がゆっくりと上下した。睫毛まで金色なんだな、と関係のないことをふと思う。

天音は小さく息を吐いてから、またペンを動かした。

『遥にひどいこと言って、連絡も無視した。傷ついたよね、ごめん』

字がかすかに震えていて、いつもよりも小さい。

『頭に血が昇って、かっとして一方的に嫌なこと言った。それなのに遥は連絡してきてくれて、謝らなきゃと思ったけど、なんて言えばいいか分からなくて、返事できなかった。自分勝手でごめん』

天音は繰り返し『ごめん』と書く。うつむいた顔はきつく唇を噛みしめていて、深い後悔が伝わってきた。

わたしはふるふると首を振り、「天音、顔上げて」と囁きかける。