わたしにとって天音は、少し人とは違う外見の印象よりも、出会ったときの春の陽射しのような歌声と綺麗な涙、そして親しくなってから知った温かい心と穏やかな笑顔の印象のほうがずっと強かった。

だから、彼が日本人離れした容姿であること、それがとても人目を引くことを、なんとなく忘れてしまっていたのだ。

たぶん、天音と会話をしたこともなくただ外から見ているだけの人たちにとっては、彼のいちばんの特徴は、金色に透ける髪や緑がかった薄茶の瞳やひときわ白い肌なんだろう。

「まあでも、そんな目立つ見た目なら、うちらでも見つけられるからいいね」

菜々美が笑って校舎のほうを見た。

わたしも同じように視線を向けて、はっと目を見張った。

「あ……っ、いた!」

香奈たちが「えっ」と声を上げてわたしの視線を追う。

「え? どこ、どこ?」

「いる?」

「いるよ、ほら、あそこ。靴、履き替えてる」

生徒玄関の奥のほう、立ち並ぶ靴箱の間で上半身を屈めて下段の靴をとっている姿。特徴的な色の髪は見えなかったけれど、背格好と肩の形ですぐに彼だと分かった。

次の瞬間、天音がゆっくりと身を起こす。暗い色の制服たちの中でひときわ目立つ、淡いブラウンの頭が見えた。

「えー……あ、ほんとだ。髪見えた」

「あー、あれか。遥、よくこんな距離から分かったね」

「ね、ほとんど姿見えないのにね」

驚いたような香奈と菜々美の言葉に、なんとなく恥ずかしくなって頬を押さえた。

「まあ……いつも見てるし」

もごもごとごまかすわたしを、菜々美がにやにやしながら見ている。

わたしは「やめてー」と両手で顔を覆ってから、また校舎のほうを見た。