わたしたちを置き去りにして盛り上がる彼らの話に、心臓が不穏に騒ぎ出す。

まさか天音がそんなふうに思われているなんて。優しくて穏やかで綺麗な心の素敵な人なのに、変とか暗いとか言われているなんて。嫌だ。

唇を噛んでうつむいたわたしの手を、遠子がぎゅっと握ってくれる。

「あー、はいはい、それは分かったから」

そのとき、彼らの話を遮るように菜々美が声を上げた。

「で、その天音くんがまだ学校の中にいるか知りたいんだけど、分かる?」

本当に頼もしい。香奈も遠子も菜々美も、それぞれの形でわたしを支えて励ましてくれる。彼女たちと友達になれてよかった、と胸がじんわりした。

「あー、E組だっけ? たしか俺らが横通った時まだホームルームやってたよな?」

「うん、そうだったと思う。あそこの担任、話長いんだよね」

「そう。教えてくれてありがとう」

菜々美がにこやかに笑って告げると、彼はどうもー、と去っていった。

その背中に、香奈が「やな感じー」と顔をしかめて、べっと舌を出す。

わたしと遠子はくすくす笑いながら、彼らに小さく手を振った。

「さて、まだ中にいるみたいだし、気長に待つか」

香奈は腕を組んで校門の中に目を向けた。

「ていうか何、ハーフとか金髪とか言ってなかった? 本当に?」

菜々美が眉を上げて覗きこんできたので、わたしは頷く。

「うん。金髪っていうか、すごく薄い茶色かな。日が当たると金色に見える。顔立ちもハーフっぽいかな」

「マジで? てか、それさっきは言ってなかったけど、いちばんすごい情報じゃない?」

「そうかな……まあ、そうか」

「そうだよ! 優しいとか静かとか穏やかとか言ってたけど、金髪ハーフっていちばん分かりやすい情報じゃない?」

「はは……思いつかなかった、ごめん」