知らない学校に向かって、違う制服の高校生たちの流れに逆らって歩く。それがこんなに気まずくて恥ずかしいものだとは思わなかった。

ベージュのブレザーの集団の中をすり抜けていく紺色のセーラー服のわたしたちを、みんながじろじろ見ていく。

逆の立場だったらわたしだってそうするだろう。

でも、あまりにも居たたまれない。

わたし一人だったら、絶対に来られなかったと思う。

提案してくれた香奈と、ついてきてくれた遠子と菜々美に対する感謝の思いが込み上げてきた。

四人で肩を寄せ合い、邪魔にならないように端っこを歩いて、やっと校門の前に辿り着いた。

先生に見つかったら何か言われるかもしれない、ということで、太い柱の陰に隠れるように立つ。

「もう下校時間なんだね。天音くんはまだ帰ってなければいいんだけど……」

遠子が不安げな目で校舎を見上げる。香奈たちも頷いた。

わたしは校門の向こうにじっと目を凝らす。おそろいの制服を着た数えきれない人たち。その中に、綺麗な金色の髪を探す。

しばらくして、香奈が突然、近くを通り過ぎようとしていた男女に声をかけた。

「一年生ですか?」

いきなり話しかけられて戸惑いながらも、男の子のほうが「そうですけど」と答える。

「そう。じゃ、天音くんって人知ってる?」

香奈は臆する様子もなく立て続けに訊ねた。

わたしと遠子は顔を見合わせて、「すごいね」「さすが香奈……」と囁き合う。

「天音? ……って、誰だ? お前知ってる?」

男の子が女の子に訊ねると、彼女は少し考えるような仕草をしてから「あっ」と思いついたように顔を上げた。

「あの人じゃない? E組のさあ、金髪の」

「えっ、ヤンキー?」

「違う違う。なんか影薄い感じの、ハーフの人」

「あー、あの変なやつか。いっつも下向いてる」

「そうそう。全然しゃべらない人」

「そうなん? え、耳聞こえないの?」

「普通に授業受けてるから聞こえてるらしいんだけど、誰もその子の声聞いたことないらしいよ。やばくない?」

「マジかよ、暗すぎだろ。コミュ障?」

「そうじゃない? たぶん」