予想通り、そこには遠子がいた。

窓際の席に座って、筆をキャンバスに走らせている。

彼女が本当に絵が上手で、とても優しい絵を描くことを、わたしは知っている。

真っ白なキャンバスをまっすぐに見つめて、ただひたすら手を動かしている横顔を見るだけで、どんなに絵を描くことが好きなのか伝わってくる。

いいなあ、と無意識のつぶやきが洩れた。

好きなもの、夢中になれるものがある人たちが、心から羨ましい。

遠子も、彼方くんも、本当に好きで部活をがんばっているのだと、見るだけで分かる。

遠子は毎日放課後になると一秒でも惜しいようにすぐに部活に行くし、夏休みもずっと美術室に通っていたと言っていた。

彼方くんも毎日暗くなるまで残って、何度も何度も跳んでいる。

他の人たちも、土日も休みなく登校して練習している。

それなのにわたしは、入りたいと思える部活も、一生懸命になれる趣味もない。

習い事もいくつかしていたけれど、何にも夢中になれなかったし、熱中もできなかった。

やりたいことを見つけろ、と進路の先生に言われたけれど、それって本当に意味があるのかな、と思ってしまう。