遠子が悪く言われるのは、悲しい。

遠子はわたしにとって大事な友達だし、彼女が本当に優しくてとても可愛らしい女の子だということは、わたしがいちばん分かっている。

確かに、控え目で大人しいから、地味だとか暗いとか言われてしまいがちだけれど、本当は彼女は――。

教室に戻って荷物を取り、また来た道を戻る。

廊下の窓から見下ろすと、グラウンドにはたくさんの部活生たちがいて、走ったりボールを追いかけたりしている。

そこには、棒高跳びの練習をする彼方くんの姿もあった。

前までは毎日のようにそれを眺めていたけれど、今はなるべく視界に入れないようにして目を逸らす。

グラウンドから目を背けても、体育館からはボールの音や掛け声が、音楽室からは楽器の音が聞こえてくる。

中庭では、園芸部の子たちが花壇の手入れをしているし、ビデオカメラを回して撮影している映画研究部の人たちもいた。

一生懸命に部活をしている彼らを横目に、わたしは寒さにコートの襟をしめながら、校門に向かって歩いていく。

何か家でやりたいことがあるわけでもないし、早く帰ったところでまたお母さんから小言を言われるだけだと思うと、足取りは自然に重くなっていった。

ゆっくりと歩いて旧館の横を通りかかった時に、美術室が目に入った。

思わず中を覗き込む。