どうして天音がどう思うかも考えずに、偉そうに押しつけがましいことを言ってしまったんだろう。

激しい後悔の嵐に襲われていたとき、ぽん、と肩に手が置かれた。振り向くと、あかりさんが少し眉を下げて微笑んでいる。話を聞かれていたんだろうか、と恥ずかしさに包まれた。

「難しいわね」

何か言われるかと身構えていたけれど、彼女がかけてくれた言葉は優しかった。

「誰かのためにしてあげたいことと、その誰かがして欲しいことは、同じとは限らないからね」

はい、と呟いてうつむく。膝の上で握りしめた指が白くなっていた。

天音のためになると思い込んでいたけれど、それはあくまでもわたしがしてあげたかったことで、彼がして欲しいことではなかったのだ。

もしも相手が求めていることじゃないなら、いくら相手のためを思ってやったことでも、ただの厚意の押しつけになってしまう。

「難しいですね……」

人の顔色ばかりを窺って生きてきた。周りの機嫌を損ねないように、嫌われないように、嫌な思いをさせないようにと考えてばかりいた。

それなのに、こんな肝心なときに、わたしにとって恩人の天音の気持ちは読み取れなかったなんて、皮肉なことだった。

背中をさすってくれるあかりさんの手のひらが温かくて、泣きそうだった。