「天音、これ見て」

二日後の月曜日、いつものように喫茶あかりに姿を現した彼に、わたしはさっそく調べたものを差し出した。

天音は不思議そうに首を傾げたあと、受け取ったメモ帳のページに目を落とす。

その瞬間、彼は硬直した。

てっきり嬉しそうな顔をしてくれるはず、と思っていたので、天音の反応は意外だった。

いきなりだったからびっくりしてるのかな、と思って、説明のために口を開く。

「あのね、これ、ちょっと調べてみたんだけど……喉とか声帯に問題がなくて、今までは普通にしゃべれてたのに急に声が出なくなっちゃうこと、失声症って言うんだって」

天音はやっぱり固まったまま下を向いている。

「原因は色々らしいんだけど、心の問題のことが多いから、まずは心療内科とかに行ってカウンセリング受けて、リハビリとかちゃんとやれば声が出るように……」

あまりにも反応がないので、確かめるように天音の顔を覗きこんで、わたしは息を呑んだ。

うつむいた彼の顔は見たこともないほど真っ青だったのだ。

見ると、握りしめた手も唇もぶるぶる震えていた。

「え……っ、どうしたの? 天音」

驚いて訊ねたものの、彼は微動だにしない。

急に不安に襲われて、わたしは彼の肩を揺さぶった。

「天音、天音、大丈夫?」

すると、ゆっくりと顔を上げた。

少しは落ち着いたのか、震えは落ち着いている。でも、顔は青ざめたままだ。

「天音……どうしたの?」

彼はくっと唇を噛んで、眉根を寄せた。ひどく苦しそうな、悲しそうな顔。