天音は声が出ないわけではない。前に歌声を聞いたし、笑ったときなどに微かに声が出ることもある。

喉の炎症や病気のせいで声が出なくてしゃべらないわけではないのだ。

よく考えて、今度は『話せない 原因』と検索した。

今度は、人前でうまく話せない、面接でうまく話せない、英語が話せない、などと出てきて、これも違う、とうなだれる。

どう調べれば、わたしが天音のために求めている情報が出てくるだろう。

考えた末、あまり使いたくない言葉を付け足した。

『話せない 病気』

いちばん最初に出てきたのは、『場面緘黙症』という病気だった。

ちゃんと言語能力があって、家族や親しい友人とは話せるのに、学校や知らない人相手などの特定の場所や場面では話すことができずに沈黙してしまう、という障害。

症状だけを見ていたら、天音に当てはまるように思えるけど、たぶん違う。場面緘黙症は幼児期に発症することが多いと書いてあるけれど、山口くんとのやりとりからすると、彼は昔は普通に話せていたらしいから。

そうなると一体天音の病気は何なんだろう、と思いながら下のほうへページを送っていたとき、『失声症』という文字が目に入ってきた。

たぶんこれだ、と直感する。

クリックしてサイトを開いてみると、そこには失声症のことが詳しく書かれていた。

――心因性失声症は、ストレスや心的外傷などによる心理的な原因から、話したいのに話せなくなる病気。これまで不自由なく話していて発声器官に問題はないのに、急に声を発することができなくなった状態。

「心因性……」

思わず小さく呟いた。心に原因があるということはつまり、精神的なものが原因で声が出なくなるということか。