カウンターで、高校生二人分のお金を払い、チケットを受け取る。

「せっかくだから交換しよっか」

と言うと、天音はおかしそうに笑ってから、自分が持っていたチケットをわたしに差し出した。

わたしも彼に「お誕生日おめでとう」と言いながらチケットを渡す。受け取った彼は、口を開いたけれど、そのまま固まる。

たぶん、わたしにも誕生日のお祝いを言ってくれようとして、声が出ないので困ってしまったのだろう。

すると彼は、お祝いの言葉の代わりなのか、わたしの頭をぽんぽんと撫でた。

意表を突かれて目を丸くするわたしを、目を細めて見つめてから、彼はにこりと頷いてシアターのほうへと歩き出した。

天音はいつもごく自然にわたしの頭を撫でる。もしかしたら、弟か妹がいるのかな、と思った。


映画は評判通り面白くて、天音も楽しそうに観ていたのでほっとする。

映画館を出て、近くのベンチに座って感想を話し合った。

「面白かったね」

『うん。面白かったし感動するところもあったし、観てよかった』

「そうそう、最後のほう感動したねえ。わたし特に、兄弟の仲直りのところうるうるきちゃったな。兄弟っていいなーって」

わたしの言葉に、天音はなぜか一瞬動きを止めてから、にこっと笑った。

今の間はなんだろう、と少し引っかかったものの、次の瞬間にはいつもの彼に戻っていたので、気にせず話を続ける。

「わたしもお兄ちゃんいるんだよね。だからなんか感情移入しちゃって」

『そういえばあかりさんとたまにお兄さんの話してるね』