天音はわたしにとって、柔らかくてぽかぽかと優しい春の光みたいな存在だ。

暗くて冷たい場所に沈んでいるわたしを、いつもその温かい光でわたしを包んでくれる。

彼がいなかったら、きっとわたしは今、こんなふうに笑えていない。たぶんどこかで糸が切れて、耐えきれなくておかしくなっていた。

天音のおかげで、わたしは救われた。

何か恩返しがしたいな。どうしたら彼は喜んでくれるだろう。

そんなことを考えながら、天音を見つめる。

どうしたの、というように頬笑む彼の手元にあるノート。いつもポケットに入れて持ち歩いているせいか、端がすりきれて丸くなっている。たくさんの文字を書き込むせいで、ページが膨れてごわついている。

もうすぐ白紙のページが終わってしまうから、また次のノートを買うのだろう。

彼は、ノートとペンがないと、思うように人と会話することさえできないのだ。

そう考えて、ふいに思いついたことがあった。

わたしが天音のためにできること。

そうだ、これをしてあげれば、きっと彼は喜んでくれる。少しでも彼の力になることができて、恩返しができる。

プレゼントを買って、家に帰ったら、さっそく調べよう。

自分の思いつきに胸が踊って、居ても立ってもいられなくなったわたしは、「そろそろ行こうか」と天音に声をかけて立ち上がった。