「――バッカみたい。なんで協力とかしちゃってるわけ?」

私の後を追ってきた香奈が、眉を寄せてわたしに言った。

外の空気の冷たさに肩をすくめながら、わたしは困った笑みを浮かべた。

「ほんと、遥って人が良すぎだよ」

と菜々美も呆れたように肩をすくめている。

わたしはどう答えたものかと少し迷ってから、口を開いた。

「……だって、遠子はちっちゃい頃からの友達だし。彼氏とのこと応援するのは当たり前だよ」

「ほんとに? ほんとのほんとにそう思ってる?」

疑うように覗きこんでくる香奈に、うん、と頷いてみせた。

香奈は大げさなほどのため息をついて言う。

「まあ、遥がそれでいいならいいんだけど。あたしの勝手だけどさあ、なーんか遠子見てるとむかむかすんだよね。あーあ、彼方くんもなんであんな地味なの選んだのかな」

わたしは、「んー」とあいまいな相槌を打って、作り笑いを浮かべた。

「見て、遥、香奈」

菜々美が背後を指差したので振り向くと、ずいぶん後ろに、生徒玄関の階段から降りてくる遠子と彼方くんの姿が目に入った。

付かず離れずの慎ましい距離感で、でも時々嬉しそうに微笑み合いながら、ゆっくりと歩いていく二人の背中。

たぶん、わたしたちがじゅうぶん離れてから玄関を出てきたのだろう。

「なにあれー、見せつけてるつもり? ほんとむかつく」

香奈が顔をしかめて不満げに言った。