「……本当に、嫌い。こんな自分、大嫌い」

ずっと胸の内に抱えていた苦い思い。親にも友達にも、誰にも言えなかった。

でも、なんでだろう、天音には言える。聞いてほしい。

わたしは、天音の前では、自分をよく見せようとか、弱音を吐ける。まだ出会って間もないのに、不思議だった。

天音はじっとわたしを見つめて、それからノートに書きつける。

『がんばったね』

柔らかくて、優しい字だった。

今まで誰からも向けられたことのない言葉だった。

それを目にした瞬間、一度引いたはずの涙が、さっきよりもずっと勢いよく溢れだした。

天音がくすりと笑って、『やっぱり泣き虫だ』と書く。「うるさい」と笑ったら、さらに涙が流れた。

「変わりたいな……」

『遥なら変われるよ』

涙で滲む目で、彼がわたしのために書いてくれた言葉をなんとか読み取る。

「変われるかな……?」

嗚咽をこらえながら言うと、天音がこくりと頷いた。そしてさらに何かを書きつける。

でも、次々に溢れる涙で、もう読むことができない。

すると天音が、悲しそうに顔を歪めて、『ごめん』と唇で言った。

話せなくてごめん、文字じゃないと伝えられなくてごめん、と言っているような気がした。だから、すぐに首を振る。

「涙が引いたら読ませて」

そう言うと、天音は意表を突かれたように目を丸くしてから、ふふっと笑った。

そして、ぽん、と頭に手をのせてくれた。胸がじんわりと温かくなる。

話せなくたってかまわない。だって、天音の優しさも温かさも、書かれた文字から、その表情や仕草から、十分に伝わる。

だから、そんなことで謝らないで、という思いをこめて、わたしはここ最近でいちばんの笑みを浮かべた。