「遠子が彼方くんと付き合いだしてから、香奈たちが遠子につらく当たるようになったの。わたしのことかわいそうって心配してくれて、わたしのために言ってくれてるの分かったから、わたしも何も言えなくて……だから、香奈たちが遠子にしてることは、全部わたしのせいなんだ」

天音が否定するように首を横に振った。街灯の光を受けて金色に透き通る髪が、さらさらと音を立てる。

「でも本当はそれだけじゃなくて、わたし自身も、遠子に対して嫌な気持ち持ってたから、香奈たちのこと止めなかったのかもしれない」

自分ではそんなつもりはなかったけれど、遠子が悪く言われることを、もしかしたら気持ちよく思っていたのかもしれない。そこまで自分の性格が悪いとは思いたくないけれど、そうじゃないと説明がつかない気もする。

「遠子のこと大事な友達って今でも思ってるのに、遠子が彼方くんといるの見ると、自分でもどうしようもないくらい……嫉妬してる」

嫉妬というのは、ドラマや映画ではいくらでも聞く言葉だったけれど、こんなにもどす黒くて汚い感情だとは思いもしなかった。自分でもコントロールできないくらい、泥のような黒い気持ちが湧きだしてくる。

こんな醜い感情が自分の中にあったなんて、信じたくなかった。でも、確かにそれはわたしの中にあって、次々に溢れてくるのだ。

「――遠子は今、ひとりぼっちなんだ。香奈たちから逃げて、わたしにも気を使って避けて、ずっと我慢してる。わたしはそれを分かってるけど、何もしないでただ見てるだけ」

いつもひとりで小さくなっている遠子の背中。それを視界の端でとらえながら、見ていないふりで香奈たちとおしゃべりしているわたし。

「そんな自分が大嫌い」

初めて口に出した言葉だった。