そう決めたはずだったのに、あんなことになってしまった。
ふうっと深呼吸をすると、白い息が夜空へとのぼっていった。
「……クラスではね、遠子の他に、香奈と菜々美っていう子と一緒に行動してたの。でも、その二人がね、遠子のこと無視したり、悪口言ったりするようになって……」
天音が苦しそうに顔を歪める。やっぱりいじめの話を聞くのは嫌いなんだろうなと思ったけれど、この話を避けるわけにはいかなくて、わたしは「嫌な話してごめんね」と謝ってから続けた。
「ネットでも遠回しに悪口とか言ってて……遠子はすごく傷ついてた。見てて分かった。中学の時よりももっと暗い顔してて、見てられないくらい落ち込んでた。いつも怯えた顔で小さくなってて、なんとかしなきゃ、なんとかしてあげたいって、わたしは思ってて…」
くっと唇を噛んで、言葉を止めた。
天音がわたしの顔を覗きこんでくる。透明な泉みたいに透き通った美しい瞳。
わたしの醜くて汚い部分を、綺麗な綺麗な天音に見せる。
怖かったけれど、わたしは口を開いた。
「でも、何もできなかった……。何もしなかった。ずっと見て見ぬふりしてた」
言葉にして初めて、自分がどれほどひどいことをしているのか、胸に突き刺さるように実感した。
大事な友達の苦しみを、見て見ぬふりをしてきた。自分さえよければいい、と思っていたのだ。
「だって、全部わたしのせいだったから……」
呻くような声が唇から洩れた。
「わたしね、好きな人がいるの。彼方くんって言うんだけどね、今、遠子と付き合ってる人」
息を呑む音がした。見ると、天音が驚いたように目を見開いていた。
ふうっと深呼吸をすると、白い息が夜空へとのぼっていった。
「……クラスではね、遠子の他に、香奈と菜々美っていう子と一緒に行動してたの。でも、その二人がね、遠子のこと無視したり、悪口言ったりするようになって……」
天音が苦しそうに顔を歪める。やっぱりいじめの話を聞くのは嫌いなんだろうなと思ったけれど、この話を避けるわけにはいかなくて、わたしは「嫌な話してごめんね」と謝ってから続けた。
「ネットでも遠回しに悪口とか言ってて……遠子はすごく傷ついてた。見てて分かった。中学の時よりももっと暗い顔してて、見てられないくらい落ち込んでた。いつも怯えた顔で小さくなってて、なんとかしなきゃ、なんとかしてあげたいって、わたしは思ってて…」
くっと唇を噛んで、言葉を止めた。
天音がわたしの顔を覗きこんでくる。透明な泉みたいに透き通った美しい瞳。
わたしの醜くて汚い部分を、綺麗な綺麗な天音に見せる。
怖かったけれど、わたしは口を開いた。
「でも、何もできなかった……。何もしなかった。ずっと見て見ぬふりしてた」
言葉にして初めて、自分がどれほどひどいことをしているのか、胸に突き刺さるように実感した。
大事な友達の苦しみを、見て見ぬふりをしてきた。自分さえよければいい、と思っていたのだ。
「だって、全部わたしのせいだったから……」
呻くような声が唇から洩れた。
「わたしね、好きな人がいるの。彼方くんって言うんだけどね、今、遠子と付き合ってる人」
息を呑む音がした。見ると、天音が驚いたように目を見開いていた。