わたしは息を呑んで、じっと天音を見つめる。

「……わたしも、そうかも」

ぽつりと呟くと、彼はゆっくりと瞬きをしてわたしを見つめ返した。

「わたしね……よく友達から、いい人とか優しいとか言ってもらえることあるんだけど、それって、たぶん自分がすごく性格悪いって分かってて、それがばれないように、みんなにいい顔してるんだよね……八方美人ってやつ」

本当のわたしは、嫉妬深くて意地悪で、ひどく醜い。

でも、それを知られたくなくて、できるだけ周りに親切にして、優しいと思ってもらえそうな行動をしている。醜い本性の上にさらに嘘を重ねて、嘘で塗り固められたわたし。

自己嫌悪で黙りこんでいると、天音がペンを走らせる音がした。目を上げると、ノートを見せてくれる。

『みんなそうなのかもね』

さっきとは違う、柔らかい文字だった。天音の表情からも硬さがなくなっている。

唐突に、話したくなった。

自分の弱いところ、汚いところ、醜いところ。絶対に人には見せたくなかった本当の自分を、天音に聞いてほしくなった。

「……話、聞いてくれる?」

そう呟くと、彼はにこりと笑って頷いてくれた。

わたしはひとつ深いため息をついて、ずっと胸に秘めてきたことを話し始めた。

「わたしね、いちばん大事な友達に、すごくひどいことしてるんだ」

一言口に出した瞬間、ぱんぱんに膨れた風船から一気に空気が漏れ出すように、話したいことが心の奥底から溢れ出してきた。

誰にも言えなかったし言わなかったけれど、本当は自分の思いを吐き出したくてたまらなかったのだと、やっと気がついた。