冬枯れの桜の木と錆びた遊具だけが佇む、誰もいない寂れた夜の公園。

朽ちかけたブランコに腰かけたわたしは、両手で顔を覆って、指の隙間から立ち上る白い息を見つめながら彼を待っていた。

かすかな足音が聞こえてきて、ぱっと顔をあげる。

色素の薄い髪を揺らしながら駆け寄ってくる天音の姿を見た瞬間、涙腺が崩壊した。ぶわっと溢れ出した涙が次々に頬を流れていく。

透明に歪んだ視界の真ん中で、天音はわたしの前に身を屈めた。まっすぐに見つめてくる、静かで優しい瞳。

「天音……」

唇から洩れた言葉は、声にならなかった。でも、聞こえなかったはずなのに、彼は微笑んで頷いてくれる。

「来てくれて、ありがとう……」

天音は何も言わずにすっと手を伸ばして、ゆっくりとわたしの頭を撫でた。

家族以外の誰かから頭を撫でられたのは初めてで、しかもお母さんに撫でられたのもいつだったか覚えていないほど昔のことで、驚きのあまりわたしは息をのんだ。

涙をぽろぽろこぼしながら見上げると、天音はふっと目を細めて、優しい優しい笑みでわたしを包んでくれる。

よかった、と思った。 天音がいてくれて良かった。

彼がいなかったら、きっと今日のわたしは、底なしの沼にどんどん沈んでいくように、もう二度と立ち直れないくらい落ち込んでいたと思う。

天音がいてくれたおかげで、彼がわたしの友達になってくれたおかげで、わたしはなんとかまだ息をすることができている。一言もしゃべらなくても、ただそこにいるだけで、そっと笑ってくれるだけで、彼はわたしを慰めてくれる。