健吾くんが帰る可能性のある、一番早い時間に部屋のインタホンを鳴らしてみたけれど、応答はなかった。
思い立って裏の駐車場に行ってみると、やっぱり車がない。
今、7時。
近くのコンビニで夕食にパンを買って、部屋の前よりは目立たないだろうと、駐車場の輪留めに座って、食べながら待った。
11時に、私のほうにタイムリミットが来た。
兄が帰ってくるまでには、家にいないといけない。
最後にダメもとでもう一度インタホンを鳴らし、むなしく部屋に響くのをドア越しに聞いてから、なにか手紙でも残していこうかと考えた。
でも、しつこいかと思って、やめた。
私と会わない日は、こんなに遅くなるんだ。
本当はこのくらい仕事したいのに、私が部屋に行くって言えば、帰ってきてくれていたんだ。
なのに変なことで駄々こねて、ごめんなさい。
健吾くんにはどうにもできないことで疲れさせて、ごめんなさい。
会いたいよ。
会いたい。
届け、と願いながら、無機質なドアに、額をごつんとぶつけた。
■
三回戦で、靖人たちは負けた。
初回に取られた1点をどうしても返せず、つらい試合だった。
3年生は、これで引退。
バイトをしてから夕方に家に帰った私は、兄の部屋の雨戸を閉めようとして、家の前の通りを歩いてくる靖人を見つけた。
1階に駆け下りて、玄関を飛び出す。
「靖人!」
「うおっ、びっくりした」
部室で、みんなと泣いてきたんだろうなあって顔をしている。
試合が終わったときも、選手たちは泣いていて、靖人はしっかりしているほうだったけど、時折目元を指で拭っていたのを見た。
「…お疲れさま」
「うん」
「靖人が泣いてるの見たの、小学校以来くらいかも」
「泣いてるとかわざわざ言うな」
「恥ずかしいんだ」
からかうと、おでこを肘でぐいと押される。
思い立って裏の駐車場に行ってみると、やっぱり車がない。
今、7時。
近くのコンビニで夕食にパンを買って、部屋の前よりは目立たないだろうと、駐車場の輪留めに座って、食べながら待った。
11時に、私のほうにタイムリミットが来た。
兄が帰ってくるまでには、家にいないといけない。
最後にダメもとでもう一度インタホンを鳴らし、むなしく部屋に響くのをドア越しに聞いてから、なにか手紙でも残していこうかと考えた。
でも、しつこいかと思って、やめた。
私と会わない日は、こんなに遅くなるんだ。
本当はこのくらい仕事したいのに、私が部屋に行くって言えば、帰ってきてくれていたんだ。
なのに変なことで駄々こねて、ごめんなさい。
健吾くんにはどうにもできないことで疲れさせて、ごめんなさい。
会いたいよ。
会いたい。
届け、と願いながら、無機質なドアに、額をごつんとぶつけた。
■
三回戦で、靖人たちは負けた。
初回に取られた1点をどうしても返せず、つらい試合だった。
3年生は、これで引退。
バイトをしてから夕方に家に帰った私は、兄の部屋の雨戸を閉めようとして、家の前の通りを歩いてくる靖人を見つけた。
1階に駆け下りて、玄関を飛び出す。
「靖人!」
「うおっ、びっくりした」
部室で、みんなと泣いてきたんだろうなあって顔をしている。
試合が終わったときも、選手たちは泣いていて、靖人はしっかりしているほうだったけど、時折目元を指で拭っていたのを見た。
「…お疲れさま」
「うん」
「靖人が泣いてるの見たの、小学校以来くらいかも」
「泣いてるとかわざわざ言うな」
「恥ずかしいんだ」
からかうと、おでこを肘でぐいと押される。