黒パン履いてるし!

急いでスカートを押さえる私を笑いながら、靖人が身体を起こした。



「カード、あれから復活したか」

「しない…もうあきらめた」



あぐらをかく靖人の隣にしゃがみ込む。



「俺と治樹くん以外の番号、入ってんのか?」

「私だって、クラスの女の子と連絡先くらい交換してます!」



今日は一日かけて、それを集めて回ったのだ。



「なっちゃんから、ピッチャーがショートに下がった直後にその横を抜けるえぐいライナーをぶっ放したのは、狙いだったのかって」

「有川ってなんなの、マニア?」

「たぶん」



帽子で顔をあおぎながら、ふうんとつぶやく。



「思ったよりうまくいったけど、まあ狙ったよ。ポジションチェンジ後ってどうしても浮つくし、そこで出鼻くじいてやれば、向こうも調子上がらないしな」

「えげつないねえ」

「俺らみたいに強くもないところは、できること全部やらないといい勝負できねーんだよ」



なんとなく、ぎくっとした。

できること、全部。

見透かしたように、靖人が頬杖をついてこちらを見る。



「健吾くんから連絡あったか」

「…ない」

「どーすんの?」



わかんないよ、そんなの…。

うつむいた私の頭に、帽子がかぶせられた。



「ま、別にいいけどね、俺は」

「汗くさい…」

「うるせー」



つばの陰で、涙が浮いた。

全然、別によくないよ、私は。

じゃあ、どうするの。