「バイトさせてもらえます?」

「大歓迎。夏服新調したんだ。ロッカーに余ってるやつ、着ちゃっていいから」



新しい制服とは、店長さんが着ていたのと同じ、黄色いTシャツだった。

夏らしくてかわいい。

ボトムは本来は私物のデニムを使うんだけど、私は以前やめてしまった女の子が置いていったのを、洗って借りている。

シャツが大きめだったので、袖をちょっと折って裾も前だけボトムに入れ、これまた前の人が置いて行ったスニーカーに履き替えてお店に戻った。



「今日、カフェタイムの子が急に休んじゃってさ、ディナー始まるまでいてもらうことできない?」

「どうりで店長さんしかいないと思った。いいですよ」

「上がるとき、商品なんでも食べてっていいよ!」



やったー。

もうひとりのホールスタッフが2階を見ているので、私は1階を担当する。

大通りからも見えるテラス席に惹かれたのか、次々とお客さんはやってきて、フルーツジュースや軽食を買っていく。

もうすぐディナータイムに代わるという頃、ひとりの女の人がやってきた。



「あら?」

「あ、美菜さん!」



案内しようとした私を見て、目を丸くする。

仕事中らしく、きれいなジャケットスタイルだ。

テラス席につきながら、楽しそうに笑った。



「びっくりしたあ、バイト?」

「ごくたまにですけど」

「私、お得意さんがこのあたりにあるから、ここよく利用するのよ。いままですれ違ってたんだね」



そういえばこの間出くわしたのもこのあたりだった。



「グリーンスムージーとチーズケーキ」

「かしこまりました。私、この後すぐ上がっちゃうんですけど、ゆっくりしてってくださいね」

「あ、そうなの? じゃあ一緒になにか飲もうよ、おごるよ」



来い来い、って感じに片手をひらひらさせる。

私は少し迷い、席にお邪魔することにした。