「…お疲れさま、かっこよかったよ」
「一塁と三塁の区別もつかないくせに、なに言ってやがる」
「そのくらいわかるよ、右が一塁でしょ!」
「右って」
くすくす笑う振動が、身体に伝わってくる。
背、おっきくなったなあ。
腕とかも、なんかもう、男の人だね。
"まっさらな奴"って、こういうの、健吾くん?
もしも今ここに居合わせても、やっぱり怒ってはくれないのかな。
所詮、高校生同士のじゃれ合いって、思うだけなのかな。
…ん?
なんか急に、重く…。
「ちょっと靖人、寝てない?」
「はっ」
徐々に体重をかけられて、ふらつきはじめていた私から、靖人ががばっと顔を上げる。
ほんとに寝てたな、こいつ。
眠そうに半目になっている靖人の腕を叩いて、目を覚まさせた。
「おばさんがごちそう作って待ってるよ」
「お前も来んの?」
「今まで手伝ってたの。今は買い出しにスーパー行くとこ」
「アイス買ってきて」
「了解」
ついでに私のも買おう。
手を振る靖人と別れ、スーパーに向かう。
ふとグラウンドの匂いがして、自分の身体からだと気がついた。
靖人に抱き寄せられた肩が熱い。
誰も予想していなかった勝ちを手に入れて、テンションが高くなっているのはわかるけれどもさ。
驚かせないでよ、と心の中で文句をつけながら、路地を走った。
■
学校帰り、大通りから少し入ったところにある、トロピカルな雰囲気の浮かれたカフェに向かった。
赤のギンガムチェックのクロスがかかったテラス席には、シェード越しの柔らかな日差しを楽しむ人たちが座っている。
店内に入ると、俺サーファーです、と全身でアピールしているような見た目の店長さんが気づき、手招きしてくれた。
「一塁と三塁の区別もつかないくせに、なに言ってやがる」
「そのくらいわかるよ、右が一塁でしょ!」
「右って」
くすくす笑う振動が、身体に伝わってくる。
背、おっきくなったなあ。
腕とかも、なんかもう、男の人だね。
"まっさらな奴"って、こういうの、健吾くん?
もしも今ここに居合わせても、やっぱり怒ってはくれないのかな。
所詮、高校生同士のじゃれ合いって、思うだけなのかな。
…ん?
なんか急に、重く…。
「ちょっと靖人、寝てない?」
「はっ」
徐々に体重をかけられて、ふらつきはじめていた私から、靖人ががばっと顔を上げる。
ほんとに寝てたな、こいつ。
眠そうに半目になっている靖人の腕を叩いて、目を覚まさせた。
「おばさんがごちそう作って待ってるよ」
「お前も来んの?」
「今まで手伝ってたの。今は買い出しにスーパー行くとこ」
「アイス買ってきて」
「了解」
ついでに私のも買おう。
手を振る靖人と別れ、スーパーに向かう。
ふとグラウンドの匂いがして、自分の身体からだと気がついた。
靖人に抱き寄せられた肩が熱い。
誰も予想していなかった勝ちを手に入れて、テンションが高くなっているのはわかるけれどもさ。
驚かせないでよ、と心の中で文句をつけながら、路地を走った。
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学校帰り、大通りから少し入ったところにある、トロピカルな雰囲気の浮かれたカフェに向かった。
赤のギンガムチェックのクロスがかかったテラス席には、シェード越しの柔らかな日差しを楽しむ人たちが座っている。
店内に入ると、俺サーファーです、と全身でアピールしているような見た目の店長さんが気づき、手招きしてくれた。