「ひっさびさにああいう店入ったわ」

「私初めてだったー、すごい、わくわくした」



翌日の土曜日、ショップや百貨店の、アクセサリーの置いてそうな場所を見尽くした頃にはもう3時を回っていた。

お昼も食べていないのに。


やっぱりアクセって、問答無用に女の子の気持ちを上げる。

私は特に女の子らしいほうでもないし、キラキラが好きなわけでもないけど、それでも上がる。

すっかり興奮しながら、カフェレストランでメニューを眺めた。



「ま、だいたい郁の好みはわかったから、当日までに用意しとくよ」

「え、今日買うんじゃないの?」

「買うとこ見ちゃったら、つまんなくないか?」



…確かに。



「もうちょっとだろ、楽しみに待ってろ」

「嬉しい、ほんと楽しみ」

「18歳って、響きは一人前だよなあ」

「高校入ったとき、3年の先輩って18歳なんだって気づいたらすごく大人に見えて、感動したなあ」

「わかる。大学入るとまた、おい先輩が成人してるよって感動が待ってるから、それも楽しみにしとけ」



健吾くんも、そんなことに感動したりするんだ。

なんだか微笑ましい。


そのとき、健吾くんの携帯が震えた。

健吾くんが頬杖をついて、テーブルに置いたまま携帯をいじる。

何度かやりとりしても解決しなかったらしく、やがて電話がかかってきた。

発信者の写真をちらっと見ただけでわかった。

美菜さんだ。



「ちょっとごめんな」

「うん」



携帯を耳に当てる姿を見つめた。

グレーのシンプルなTシャツにジーンズ。

手首に細いレザーのブレスレットをしている。

やっぱりかっこいいし、大人だよね。


声を低めて会話する間に料理が運ばれてきて、健吾くんはテーブルについていた肘をどけ、店員さんに軽く目でお礼をした。

健吾くんの電話が終わるまで待っていようと、お皿に手をつけずにいる私に、食べろと指で合図をする。

自身も片手でフォークを持ち、話しながらパスタを食べはじめた。