「えっ、覚えててくれたの」

「普通覚えてるだろ、なにが欲しいか訊こうと思ってた」



今日は泊まれる日だ。

休み前夜だから、健吾くんも「もう寝る」とはまだ言わない。

それが嬉しくて、ベッドに一緒に横になって、眠気の訪れを予感しながらぽつぽつとおしゃべりをした。

健吾くんは、前に一度教えたことがあるきりの、今月の私の誕生日をちゃんと覚えていてくれていたらしい。



「健吾くんがくれるものならなんでも嬉しいよ」

「そうだろうとは思うんだけどさ、加減がわかんねーんだよ。郁が自分で買えないようなものをいきなり持ってたりしたら、なにかと思われるだろ、兄貴とかに」



そうか、なるほど。

片腕で頭を支えて、携帯をいじりながらうーんと唸っている。



「でもノーブランドってかえって選ぶ基準なくて、ちょっと途方に暮れてたとこ…」



いろいろ調べてくれていたらしい。

私はひそかに感動し、胸にぎゅっと抱きついた。



「なに」

「アクセサリーが欲しい。ずっとつけていられるようなの」

「学校で怒られないか?」

「うち校則ゆるゆるだよ、忘れちゃったの?」

「男ばっかりだったから、そのへんの校則気にしたことなかった」



そういえばそうか。

もと男子校という成り立ちのおかげで、女子に特化した校則がいまだに設定されていないだけなのかもしれない。

禁止しないと案外、ピアスも金髪も誰もやらないもので、うちの高校は見た目も中身も、ぽやんとのんきで落ち着いている。



「アクセって、たとえば?」

「ペンダントとか。できたらちゃんとしたのがいいな」

「ブランドってこと?」

「そこまでいかなくても、健吾くんが同い年の人にあげるとなったら選ぶくらいの」

「子供だましじゃないのってことだな、了解。まあ派手じゃなきゃ、多少いいのつけててもそんな目立たないだろ」



言いたかったことを正確に汲んでもらえて、私は嬉しくなった。