「郁、なにか言え」



ぐらぐらと頭を揺らされて、心の中にあった言葉がこぼれ落ちる。



「健吾くん、好き」



しゃっくりみたいにひくつく喉の奥から、叱られて叱られて最後にやっと謝る子供みたいな、そんな声が出た。

健吾くんが驚いた顔をして、それから少し困ったように微笑んだ。



「俺だって好きだよ」



頭にあった手が、髪をなでながら下りてきて、頬を包む。



「俺は何度もそう言ってるし、態度にだって出してるつもりだよ。それでも不安になるならもう知らない。勝手にしな」



冷たい言葉と裏腹に、見下ろす瞳も頬に触れる指も、これでもかってくらい優しくて、胸が詰まる。

そんなふうだから、愛情と大人の余裕の区別がつかなくて私が不安になるんだよ。

わかる?

我ながら甘ったれてると思うけどね。



「というわけで」

「痛!」



突然、ぎゅっとほっぺたをつねられて、私は悲鳴をあげた。



「とりあえず、あっち行ってろ」

「Tシャツは着ないでこっち来て」

「なんで?」



もう続きをする気が失せたんだろう、ドライヤーを片づけながら健吾くんが眉をひそめる。



「きれいなんだもん、健吾くんの身体」

「じゃあお前が変な気起こさないよう、ちゃんと着るわ」

「意地悪!」



見るくらいいいじゃないか!

憤慨する私を楽しそうに笑い、少したって部屋に戻ってきた健吾くんは、本当にきっちりTシャツを着ていた。

ケチ。