手で目を拭きながらうなずく。



「私のこと、なんて紹介するつもりだった…?」



涙まじりの震える声で突きつけた疑問は、それなりに彼を揺さぶったようだった。

健吾くんは一瞬はっとし、腕をほどくと、慎重に言った。



「気にしてた?」

「なんて言うつもりだったの」



少しためらって、難しい顔をする。



「たぶん郁が想像してる通り、つきあってるって言うつもりはなかったよ、あそこでは」



そうだよね。



「でも嘘つく気もなかった。大事な子だって伝わればいいなと思って、そんなふうに紹介するつもりだった」



鼻をすすって、熱い息を吐いた。

駄々っ子みたいだ、私。

なにも言わない私の頭を、今度こそ健吾くんがなでた。



「彼女だとか言ったら、当然そういう関係だと思われて、いろいろと勝手な想像される。わかってると思うけど、郁は俺の相手としては、ちょっと驚かれるくらいには幼いから」



見下ろす目は微笑んでいなくて、真剣そのもの。



「郁をそういう目で見られるのが、絶対に嫌だったんだよ」



涙が溢れて、止まらなくなった。

手の甲を押しつけてうつむく私の顔を、ぐいと頭を押しやるようにして上げさせる。



「俺、なにもごまかしてないからな?」



言い聞かせる顔は、ちょっと厳しい。

私のご機嫌をとっているわけじゃなく、本当のことを言っているだけなんだと、教えたいに違いない。

疑り深い私の、揺れる心までお見通しってことだ。


うん、ごめん、信じる。

信じる。