【今日はお兄ちゃんが早いの。明日なら行ける】

【じゃ、明日な】

【お仕事忙しくない?】

【いつも通りだよ】



手応えがいつもよりあったような気がしなくもない試験の後、疲れた脳を引きずって、健吾くんとやりとりした。

紙パックのジュースをすすりながら、ぼんやり画面を見る。


明日は金曜日だ。

金曜日は、飲み会や残務の処理で帰りが遅くなることが多いので、あまり会えたためしがない。

無理に帰ってきてくれるつもりなのか、それとも本当に用事のない日なのか。


今日も、がんばって行こうと思えば行けた。

私、試したのかな。

嫌な奴だな…。





「うー、暑い」

「今日は蒸したね」



帰ってくるなり健吾くんはぽいぽいと着ていたものを脱いで、バスルームに直行した。

5分くらい水音がして、すぐ終わる。

少したつとドライヤーの音が聞こえはじめたので、勉強の手を止めて、そっとのぞきに行った。



「うわっ、びっくりした」



腰にバスタオルを巻いた健吾くんが、忍び込んだ私を鏡の中で見つけて、ぎょっとした顔をした。

軽く割れているお腹に後ろから抱きつくと、「なんだよ」と苦笑する。



「取っちゃおうかな、これ」

「バカ、やめろ」



バスタオルに手をかけると、ちょっと本気っぽく焦った。

ドライヤーを置いて、バスタオルの合わせ目を死守する。

本気で取ろうと思っていたわけではもちろんないけれど、その様子がかわいかったので、しつこく手をかけるふりをした。



「やめろって」

「最初のときは、ためらいなく見せてたじゃん」

「あれは使うから出しただけだ、別に見せたわけじゃない」

「使うから出した!」