「健吾くんは、『ダイエット中だから』ってわざわざ口に出されるのが嫌いなんだって」
「まったくもって同感だけど、健吾くんいねーし、そもそもダイエットなんかしてねーだろ、お前」
「おいしい!」
まだ焼きたてだ。
冷やして二度おいしいのだ、明日が楽しみ。
「治樹くんに、健吾くんのこと突っ込まれなかったか?」
「今まさに突っ込まれてきた。でもぼやっと説明したら、なんとなくごまかせた…気がする」
ごまかすって言葉、嫌だなあ…。
そんな心情を察してか、靖人も複雑に表情を曇らせた。
「母さんに口止めしときゃよかったな」
「靖人って、健吾くんのこと気に入らないのかと思ってたよ。実は応援してくれてるの?」
「応援、は…」
ケーキのお皿をあぐらの脚に載せて、フォークでつつきながら靖人が、考え込むような声を出す。
「してない」
「あ、そう」
「俺もう、これ食い飽きた…」
「嫌々食べるくらいなら残しといて!」
「でもこれがお前の脂肪になると思うと、幼なじみの義務として」
「おいしいって思いながら食べれば栄養になるんです。あーこれダメやばいって罪悪感にまみれながら食べると脂肪になるの」
「そんなことはない」
薄情な発言を無視してお皿を引き取り、もりもりと食べる私を、失礼にも靖人は、薄気味悪そうに見ていた。
■
週明け、通りを歩いていると、控えめなクラクションが聞こえた。
「郁実ちゃーん」
「あ」
ちょっと行ったところに赤い車が停まっていて、運転席側に女の人が立ち、こちらに手を振っている。
青井さんだった。
「まったくもって同感だけど、健吾くんいねーし、そもそもダイエットなんかしてねーだろ、お前」
「おいしい!」
まだ焼きたてだ。
冷やして二度おいしいのだ、明日が楽しみ。
「治樹くんに、健吾くんのこと突っ込まれなかったか?」
「今まさに突っ込まれてきた。でもぼやっと説明したら、なんとなくごまかせた…気がする」
ごまかすって言葉、嫌だなあ…。
そんな心情を察してか、靖人も複雑に表情を曇らせた。
「母さんに口止めしときゃよかったな」
「靖人って、健吾くんのこと気に入らないのかと思ってたよ。実は応援してくれてるの?」
「応援、は…」
ケーキのお皿をあぐらの脚に載せて、フォークでつつきながら靖人が、考え込むような声を出す。
「してない」
「あ、そう」
「俺もう、これ食い飽きた…」
「嫌々食べるくらいなら残しといて!」
「でもこれがお前の脂肪になると思うと、幼なじみの義務として」
「おいしいって思いながら食べれば栄養になるんです。あーこれダメやばいって罪悪感にまみれながら食べると脂肪になるの」
「そんなことはない」
薄情な発言を無視してお皿を引き取り、もりもりと食べる私を、失礼にも靖人は、薄気味悪そうに見ていた。
■
週明け、通りを歩いていると、控えめなクラクションが聞こえた。
「郁実ちゃーん」
「あ」
ちょっと行ったところに赤い車が停まっていて、運転席側に女の人が立ち、こちらに手を振っている。
青井さんだった。