「…あの」

「別に遊んでなかったし、普通だったし、みんなこんなもんだし」



なにその言い訳の勢い。

健吾くんて、大学は東京だったんだよね。

確かにみんなこんなものと言われれば、そうなのかもしれない。

でも…とりあえず、これは靖人には見せられない。



「4人"くらい"の謎の答えがここに…」

「違うって、見た目ちょっと浮ついてるけど、真面目だったよ」



なら、なんでそんな必死なの?

ごまかしている感じでもないので、たぶん本当なんだろうと思いつつ、そんな健吾くんが珍しくて、じろじろ見てしまう。



「これ、飲み会?」

「バイト終わりに店で遊んでるとこ」



ふうん…。

気を抜くと引っ込めようとしたがる健吾くんの手ごと携帯を握りしめて、じっくり見た。

うん、今とだいぶ雰囲気は違うけど、やっぱりかっこいいよ、これはこれで。



「…なに?」

「ん? かっこいいなあって」

「あ、そう」

「なんで信じないの? かっこいいと思うからこういう恰好してたんじゃないの? どう見てもモテたでしょ、これ?」

「…まだ人生に黒歴史のない奴って、残酷だよな」

「私にだって恥ずかしい過去くらいありますー」



言い争いが始まりかけたところで、いきなり犬がキャンと吠えた。



「わっ、びっくりした、よしよし」

「あ、腹減ったのかな」

「無視されて腹立ったんじゃない?」

「そういうこともあんの?」



あるよお。

私は自分で飼ったこそないけれど、靖人の家の犬と一緒に育ったので、彼らの心理についてはちょっとくらいならわかる。