本格的に泣きはじめた私を、よしよしと頭をなでてあやして、柔らかいキスをくれる。
涙が移ったのか、ちらっと自分の唇を舐めてから、またくっつけてきてくれたのが、なんだかすごく印象に残った。
「私のこと、追っかけようとしてくれてた?」
「そうだよ、一服して落ち着いてからな」
「なんでそこで一服」
笑うと、シートベルトをまた締めながら、「あのなあ」と怒ったような声を出して私をにらむ。
「偉そうなこと言ったけど、ただ単に、彼女に昔の女の話なんかしたくねえって心理がほとんどだよ、このくらいわかれよ」
思わずぽかんとしてしまった。
あ…そういうこと?
単に、そういうこと?
「あの、えーと…好奇心で訊いてごめんね?」
「まったくだ、ガキ!」
そんな言い方することないじゃん!
吐き捨てると健吾くんは、気持ちの余裕がなさすぎて鼻から突っ込んで停めた車を、いささか荒っぽくバックで出した。
横顔が、怒っている。
ように見えるけれど、きっとそうじゃなくて、照れている。
じいっと見る私に気づき、一瞬こちらを見てから、いかにも腹立たしそうに言った。
「いったい俺、ひとりで何役やればいいわけ?」
うん、ごめんね。
彼氏させたり保護者させたり、ほんとごめんね。
「今だけの辛抱だよ」
「ほんとだよ、早く大人になれ」
「うん」
でも私、初めて、もう少し子供でいたいなって思ってる。
この優しくて口の悪いお兄さんに、彼女扱いしてもらったりガキ扱いしてもらったりするのを、楽しみたいなって思ってるよ。
少しだけ煙草の匂いのする、健吾くんの車。
運転している姿を見るのが、実は大好きなので、じろじろと遠慮なく眺めていたら、いい加減気になったらしく、「見るな」と片手で視界をふさがれた。
その手のひらは、熱かった。
涙が移ったのか、ちらっと自分の唇を舐めてから、またくっつけてきてくれたのが、なんだかすごく印象に残った。
「私のこと、追っかけようとしてくれてた?」
「そうだよ、一服して落ち着いてからな」
「なんでそこで一服」
笑うと、シートベルトをまた締めながら、「あのなあ」と怒ったような声を出して私をにらむ。
「偉そうなこと言ったけど、ただ単に、彼女に昔の女の話なんかしたくねえって心理がほとんどだよ、このくらいわかれよ」
思わずぽかんとしてしまった。
あ…そういうこと?
単に、そういうこと?
「あの、えーと…好奇心で訊いてごめんね?」
「まったくだ、ガキ!」
そんな言い方することないじゃん!
吐き捨てると健吾くんは、気持ちの余裕がなさすぎて鼻から突っ込んで停めた車を、いささか荒っぽくバックで出した。
横顔が、怒っている。
ように見えるけれど、きっとそうじゃなくて、照れている。
じいっと見る私に気づき、一瞬こちらを見てから、いかにも腹立たしそうに言った。
「いったい俺、ひとりで何役やればいいわけ?」
うん、ごめんね。
彼氏させたり保護者させたり、ほんとごめんね。
「今だけの辛抱だよ」
「ほんとだよ、早く大人になれ」
「うん」
でも私、初めて、もう少し子供でいたいなって思ってる。
この優しくて口の悪いお兄さんに、彼女扱いしてもらったりガキ扱いしてもらったりするのを、楽しみたいなって思ってるよ。
少しだけ煙草の匂いのする、健吾くんの車。
運転している姿を見るのが、実は大好きなので、じろじろと遠慮なく眺めていたら、いい加減気になったらしく、「見るな」と片手で視界をふさがれた。
その手のひらは、熱かった。