「いって…」
「ごめん、ねえ健吾くん、助けて、どうしよう」
「なにがだよ、…って、郁!」
最後は悲鳴に近かった。
私を見て目を剥くと、裸の肩をものすごい勢いで掴んでくる。
「なにがあった、なんかされたのか」
「ねえどうしよう、これ、この子」
私は泣きながら、腕に抱きかかえていたものを見せた。
くるんだTシャツに、じわじわと血が染みていくのが腕の感触でわかる。
どうしよう、どうしよう。
ようやく事態が掴めたらしい健吾くんが、Tシャツの中を見て目を丸くする。
さっきまで暴れていたその子は、もうぐったりと目を閉じていた。
「…犬か、これ?」
■
「ここですね、関節に近い位置だったのでしっかり固定する必要があって、ピンを入れました」
「歩けるようになるんですか?」
「なりますよ、見たところ2歳くらいですから、2か月ほどで元通りになると思います」
「そうですか…」
必死でネットで調べてたどり着いた夜間救急のある動物病院で、親切な若い先生の話を聞きながら、健吾くんと安堵の息をついた。
「出血があったのと、もとからの衰弱で体力が落ちてしまっていますが、これもすぐ元に戻るでしょう。ただ事故や手術のショックで食べられなくなる子もいるので、気をつけてあげてください」
私と健吾くんが黙ってしまったのを見て、先生が、あっという顔をする。
「そうか、飼い主さんじゃないんですよね」
「あの、こういう場合って、どうすればいいんでしょう。一時的に預かるくらいはしてやりたいですが、ほとんど家にいないので」
「まずはこの子を探している飼い主がいないか確認ですね。しつけないと吠える犬種ですし、衰弱の具合から見ても、捨てられちゃった可能性が高いかな…」
先生はそう言うと、保健所に連絡、警察に連絡、とやるべきことを書き出してくれる。
「今日はこちらでお預かりします。明日の朝の様子を見て、お昼くらいにはお引き取りのご連絡をします。それまでにこの子をどうするか、決めてきてください」
優しく笑い、『小型犬との暮らし方』という冊子をくれた。
別れ際に見たさっきの犬は、透明なプラスチックのケースの中で、首にメガホンみたいなものをつけて眠っていた。
「ごめん、ねえ健吾くん、助けて、どうしよう」
「なにがだよ、…って、郁!」
最後は悲鳴に近かった。
私を見て目を剥くと、裸の肩をものすごい勢いで掴んでくる。
「なにがあった、なんかされたのか」
「ねえどうしよう、これ、この子」
私は泣きながら、腕に抱きかかえていたものを見せた。
くるんだTシャツに、じわじわと血が染みていくのが腕の感触でわかる。
どうしよう、どうしよう。
ようやく事態が掴めたらしい健吾くんが、Tシャツの中を見て目を丸くする。
さっきまで暴れていたその子は、もうぐったりと目を閉じていた。
「…犬か、これ?」
■
「ここですね、関節に近い位置だったのでしっかり固定する必要があって、ピンを入れました」
「歩けるようになるんですか?」
「なりますよ、見たところ2歳くらいですから、2か月ほどで元通りになると思います」
「そうですか…」
必死でネットで調べてたどり着いた夜間救急のある動物病院で、親切な若い先生の話を聞きながら、健吾くんと安堵の息をついた。
「出血があったのと、もとからの衰弱で体力が落ちてしまっていますが、これもすぐ元に戻るでしょう。ただ事故や手術のショックで食べられなくなる子もいるので、気をつけてあげてください」
私と健吾くんが黙ってしまったのを見て、先生が、あっという顔をする。
「そうか、飼い主さんじゃないんですよね」
「あの、こういう場合って、どうすればいいんでしょう。一時的に預かるくらいはしてやりたいですが、ほとんど家にいないので」
「まずはこの子を探している飼い主がいないか確認ですね。しつけないと吠える犬種ですし、衰弱の具合から見ても、捨てられちゃった可能性が高いかな…」
先生はそう言うと、保健所に連絡、警察に連絡、とやるべきことを書き出してくれる。
「今日はこちらでお預かりします。明日の朝の様子を見て、お昼くらいにはお引き取りのご連絡をします。それまでにこの子をどうするか、決めてきてください」
優しく笑い、『小型犬との暮らし方』という冊子をくれた。
別れ際に見たさっきの犬は、透明なプラスチックのケースの中で、首にメガホンみたいなものをつけて眠っていた。