回らない頭で、あれーこの人、そんな感じ全然なかったのにな、やっぱり最初からこういうつもりだったのかな、男の人ってわかんないな、などなど考えた。

結論、"かっこいいから、いいや"。


たぶん健吾くんは酔っ払っていたのもあり、私を適当な遊び相手と踏んでいたのもあり。

『2時間超えするようなのはできないけど』と軽く言いながら、おざなりに必要なところだけ服をはだけさせて、早々に重なってこようとした。

そこでようやく違和感に気づいたらしい。



『ん…?』



ぐいぐいと押し広げられる新感覚に、こっちは再び衝撃。



『いっ、…た』

『え、ちょっと待って』



圧迫がなくなり、ぎゅっとつむっていた目を開けると、愕然とした表情の健吾くんが見下ろしている。



『…初めて?』



ネクタイを外して、ボタンをひとつふたつ開けただけで、ほとんど着衣も乱れていない彼の顔は強張っており。

うなずくと、蒼ざめた。



『…いくつって言ったっけ』



ここまで来たらもう、これ以上の嘘は無意味だろう。



『実は、高2』

『高…』



いまだに私は、あれほどにうろたえた健吾くんを見たことがない。

というより、あれほどうろたえた人を見たことがない。


血の気の引く音が、こっちにも聞こえた気がした。

がばっと飛びのくと、健吾くんは真っ青な顔で叫んだのだった。



『ごめん!』

「思い出し笑いすんな」



膝で揺すられて、はっと我に返ると、確かに顔が笑っている。

いけない、いけない。

でもだって、笑っちゃうよ。

あんな遊び慣れた雰囲気だった人が、本気で謝ってくれて、私がなにを言っても、絶対に続きをしようとしなかったのだ。