『休憩だから、寝たら時間オーバーするよ』

『何時間?』

『2時間』

『意外と短い』



2時間なんて、昼寝にも半端だ。

そう思いながらヘッドボードの小物なんかをチェックしていたら、健吾くんがあきれたように笑った。



『いっつもどんだけ濃いのしてんの?』

『わー、すごい、初めて見た』



蓋つきの小物入れに、まあ当然ながらそういうものが入っていた。

現物を手にしたことのなかった私は興味津々で、中でも毒々しいカラーリングのひとつを見せた。

いつの間にか煙草をくわえていた健吾くんが、苦笑してそれを手に取る。



『こういうの使いたくなる頃もあったよな』

『今は違うの?』

『まあ、相手が使いたがるなら…俺はあんまり』

『それって愛がないよ』



微妙に会話が食い違っているのにも気づかず、偉そうに聞きかじりを口にする私に、健吾くんは小馬鹿にしたように眉を上げた。



『そんなんで愛なんて決まらねーよ』 

『えー、最低』

『まあいいや、"いく"って名前?』

『うんそう、郁実。よく私の名前、聞いてたね』

『俺もよく"いく"って呼ばれるからさ。生島っての、生島健吾』

『生島さん』

『健吾でいいよ』



ベッドに横になって、片肘で身体を支えて、煙草を吸っている。

兄以外の男の人がそんなふうにくつろぐ姿を間近で見て、かっこいいもんだなあと私は素直に感動した。



『こっち地元だろ? 高校どこだった』

『えっ』



だった、と問われて、身分を偽っていたことを思い出す。

この地方都市で、大学に行くような高校といったら限られている。

変なボロが出ませんようにと願いつつ正直に高校名を言うと、健吾くんが驚きの声を発した。