スーツを脱いで、ネクタイをとって、ワイシャツの袖と前のボタンを外して脱ぐ。

人には見えるところで着替えるなと言うくせに、健吾くん本人はこうして、私の前でパンツ一丁くらいにはなるのだ。

下に着ていたTシャツも脱ぐと、綺麗な身体が現れる。

ガリガリでもマッチョでもない、ほっそりと締まったいい身体。

うむ、ごちそうさまです。



「懐かしいな、模試とか。集中力の訓練とか言って、無意味に教室交換して受けるやつ、今でもやってんの?」

「そっか、健吾くん、同じ高校か!」

「忘れてんなよ」



そうだった、そうだった。

健吾くんは私の高校のOBなのである。

初対面のときも、その話で盛り上がったんだった。



「あのときの話はやめろ」

「そんなにショックだった?」

「ショックだったよ」

「自分で連れ込んでおいて」

「だからその話をやめろって」



顔を赤らめながら着替えを終え、冷蔵庫から水のペットボトルを取ってくると、私を前に詰めさせて、ベッドとの間に座る。

脚の間に収まった私に、後ろから腕を回すようにして、私の身体の前でペットボトルを開けて、ついでのようにうなじにチュッとキスをしてからそれを飲んだ。


これ、見た目より酔っ払っているな、たぶん。

そういうときの健吾くんは、スキンシップが増えるのだ。

あのね、私、口とかほっぺた以外へのキスって、まだ慣れなくて、ものすごく戸惑うんだよね。

知ってるよね?


もしかしたら、恥ずかしがらせた仕返しかもしれない。

あの日、ホテルに入った私たちは、というか私は、テレビなんかでしか知らなかった雰囲気を目の当たりにし、興奮した。



『思ったより妖しくない』

『そりゃ、そういう部屋を選んだから』



この頃には、健吾くんのことは、すっかりいいお兄さんと認識していて、警戒なんてこれっぽっちもなかった。

バカでかくて清潔感のあるベッドに飛び乗ると、上着を脱いで健吾くんも上がってくる。