みんないろいろだ。

最終的に、ひとりが電子化してあると言いだし、そのpdfデータをもらえることになった。

デジタルネイティブ! という尊敬の声が飛び交う。

無線部のその子は、ボールを両手の中指の間でしゅるしゅると回しながら「後でなにかに使うかなーと思ってさ」と答えた。



「そこそこサイズあるから、USBメモリに入れて持ってくるよ」

「すごい、ありがとう、助かる」



するとやりとりを聞いていたほかの子が、はいと手をあげた。



「俺もそれ見せてもらっていい? 英語、行き詰まっててさ。1年のからやり直すって、ありかも」



教室内から、私も、俺も、という声が次々あがる。

無線部くんがざっと希望者の数を確認して、小さく息をついた。



「やっぱサーバに上げるわ。URLはアドレスわかる奴にだけ送るから、適当にみんなで共有して」



わーい、と拍手が出る。

のんびりして見えて、みんなやっぱり2年のときとは違う。

受験生であることを、いつだって意識して過ごしている。

上の中くらいのこの高校でさえ、こうなんだから。

トップクラスの高校に通っていた兄が、どんな思いで教室にいたのか、考えるだけで胸が痛くなった。





「お、やってんな受験生」

「受験生って呼ばないで」

「高校3年生」

「変わんないよ!」



健吾くんの部屋で勉強していたら、主が軽いお酒の気配と共に帰ってきた。

今日は兄が明日の昼まで帰ってこないので、泊まれるのだ。

ここに常備してある部屋着に着替え、前髪を全部ヘアバンドで上げて一心不乱に問題集を埋める私を、健吾くんがくすっと笑った。



「珍しいじゃん、俺んちでそこまで集中してるの」

「うー、終わった、え、なに?」

「試験前?」

「月イチで模試だもん、常になにかしらの試験前だよ」

「あー、そんなだったっけなあ」